1.はじめに ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業実行委員 筑波大学附属視覚特別支援学校 高等部教諭  青松利明  2016年8月3日から12日まで、イギリスにおいて視覚障害のある高校生を対象に10日間の研修プログラムを実施しました。この冊子はその研修報告書です。  この研修は、公益財団法人ダスキン愛の輪基金が視覚障害者を対象に2014年に初めて行ったジュニアプログラムの第2弾として実施されました。2015年秋に募集がおこなわれ、2014年1月の書類選考、2月の面接審査・健康チェックを経て、和歌山県立星林高等学校、聖母被昇天学院中学校高等学校、筑波大学附属視覚特別支援学校から4名の生徒が研修生として選抜されました。また、引率スタッフとしては盲学校教員など4名と赤十字語学奉仕団からの通訳者1名、全体の統括をおこなうアドバイザーとして筆者が参加することになりました。  3月には、ダスキン愛の輪基金が実施する他の障害者海外派遣プログラムと合同で2日間のオリエンテーションをおこないました。また、7月にはジュニアプログラム参加研修生と引率スタッフのみで1泊2日の出発前オリエンテーションをおこないました。2回のオリエンテーションを通じて、研修テーマを理解するとともに、研修生・スタッフの顔合わせ、イギリスにおける視覚障害者を取り巻く状況についての事前学習、研修内容についての意見交換、イギリスの若い視覚障害者との交流会でのプログラムの検討、研修生・スタッフの役割分担等をおこないました。また、メーリングリストを作成し、直前の情報交換に活用しました。  8月3日には全員元気に成田空港に集まり、期待と不安の中、和やかに出発しました。アムステルダムでの乗り換え時間が短く、研修生1名・スタッフ1名の荷物の到着が遅れるというハプニングがあり、先が思いやられましたが、その後は順調にプログラムが進みました。  研修の前半は、イギリス・オールダム教育局 特別なニーズ支援部視覚・運動障害児チーム 代表のKay Wrench(ケイ・レンチ)先生ご夫妻が宿泊施設に一緒に泊まり込んでくださり、コーディネートをしてくださいました。また後半は、RNIB(英国盲人協会)政策・運動部門のMs. Suzanne O'neill(スザン・オニール)氏、在英国日本国大使館書記官 医療・社会福祉担当和田幸典氏・同教育担当板倉寛氏にプログラムのコーディネートの協力をいただき、研修を実施することができました。宿泊は、前半が野外教育センターとホームステイ、後半が大学の学生寮でした。前半は自然豊かな地方に、後半は大都市に滞在しながら、視覚障害当事者やその関係者との交流、イギリス文化の体験、教育、芸術、アクセシビリティに関する学習等、多岐に渡る研修をおこないました。  この報告書では、研修テーマ、日程、研修生・スタッフ一覧、各研修生の目標、研修生による研修内容の報告、各研修生・スタッフのまとめを掲載しています。報告書を通じて、研修生が学んだことを読者のみなさまにも知っていただき、この研修の意義をご理解いただけることを期待しております。 2.研修テーマ ①日常生活・情報・文化・教育・就労等における障害者のアクセシビリティについて ②障害者の自立に向けた努力や取り組み ③障害者リーダーの活動状況や想い ④異文化体験 ⑤自立への意識・コミュニケーション力・他人への思いやり・リーダーシップ等の向上 3.日程 8月3日(水)  出発、現地着、オリエンテーション 8月4日(木)  講義:オールダムとインクルーシブ教育(Kay Wrench先生)  国立炭鉱博物館見学  ヨークシャー彫刻公園散策 8月5日(金)  野外活動(ウォールクライミング、カヌー)  異文化交流パーティ 8月6日(土)  ホームステイ 8月7日(日)  ロンドンへ移動  ヴィクトリア&アルバート博物館見学  市内散策  大観覧車「ロンドンアイ」体験 8月8日(月)  キングスクロス駅 9と3/4ホーム見学、ハリーポッターショップ  RNIB 講義:視覚障害者に対する音楽教育(Sally-Anne Zimmerman先生)     視覚に障害のあるヴィオラ奏者との懇談(菊地崇氏) 大英博物館 エジプトギャラリー見学 8月9日(火)  RNIB 視覚障害者用用具販売部見学(Rose Doyle氏)     講義:インクルーシブ教育( Ros Davies氏)     講義:アクセシビリティー(Hugh Huddy氏)     講義:視覚障害当事者の刺激的な話 (Khafsa Ghulam氏)  ロイヤルアルバートホール見学ツアー  コンサート「BBCプロムス33」エルガー交響曲第1番など 8月10日(水)  在英国日本国大使館  書記官との懇談、館内見学     パラリンピック金メダリスト ノエル・サッチャー氏との懇談  セントポール大聖堂タッチツアー 8月11日(木)  現地発  ミーティング(まとめ) 8月12日(金)  帰国、解散   4.参加者(研修生・引率スタッフ一覧) 1)研修生 ①青木 悠弥(あおき ゆうや)筑波大学附属視覚特別支援学校高等部2年 ②今岡 称(いまおか かなえ)聖母被昇天学院中学校高等学校2年 ③菅田 利佳(すがた りか)和歌山県立星林高等学校1年 ④横山 政輝(よこやま まさき)筑波大学附属視覚特別支援学校高等部1年 2)引率スタッフ ①石川 英司(いしかわ えいじ/日本大学歯学部外国語) ②佐藤 紀子(さとう のりこ/日本大学歯学部健康科学) ③鈴木 彩(すずき あや/筑波大附属視覚特別支援学校高等部) ④松崎 茜(まつざき あかね/全国高等学校長協会入試点訳事業部) ⑤宮﨑 晶子(みやざき あきこ/赤十字語学奉仕団) 3)アドバイザー 青松利明(あおまつ としあき/筑波大附属視覚特別支援学校高等部) 5.研修の目的 1)青木 悠弥  私が掲げた目標は主に2つありました。以下、目標とそのように考えた理由をそれぞれ記します。 (1)「イギリスの視覚障害者教育について学びたい」  私は将来、視覚障害者教育にたずさわりたいと考えています。今回イギリスの視覚障害者教育に触れることで、日本の視覚障害者教育のあり方を考えるきっかけにしたいと考えました。 (2)「海外に友人を作りたい」  メールなどで意見を交わすことのできる友人を作れば、コミュニケーション力の向上や様々な考えに触れる良い機会を得ることができると考えました。 2)今岡 弥  研修応募の最初の動機は、自分以外の視覚障害者と接したいと考えたことです。私はこれまで自分以外の視覚障害者と関わったことがありません。研修で他の参加者と関わり、いろいろな考え方に触れて自分を成長させたいと思いました。それから、福祉先進国のイギリスでは年齢や障害の程度にあわせ、どうやって個人の能力を伸ばしているのか知りたいと思いました。特に進学、就職につながる取り組みに興味がありました。また、地域社会の体制について、各個人で必要とする支援が異なる視覚障害へのイギリスの対応を知りたいと考えました。日本の障害等級別の福祉支援制度では各個人が必要とする支援の全てはカバーできません。私はイギリスの公的な支援と、公的支援では埋められない部分はどうしているのか、民間団体等の私的な支援があるなら、その内容も調べたいと思いました。  個人や社会が、ハンディをどのような工夫や努力で乗り越えているかを学んで、これを日本の障害者の社会参加のハードルを下げることにつなげたいと考えています。そして、全ての視覚障害者が安心して生活するためにはどうすればよいかを考えていきたいと思います。   3)菅田 利佳  この研修に参加させていただくにあたり、私には主に二つの目標がありました。 一つ目は、イギリスの視覚障害者が受けている音楽教育について聞くことです。私は、点字楽譜を使用しており、将来は、ピアニストになりたいと考えています。そのため、イギリスでは点字楽譜がどの程度普及しているのかを、自分が学んできた環境と比較してみたいと思いました。  二つ目は、英語力を試すことです。これまでほぼ独学で身につけてきた英語が、現地でどの程度通じるのかを知るためにも研修中は積極的に英会話をしようと決めていました。そして、様々な経験を通して、一つでも多くの学びを得たいという思いで、私はイギリスに出発しました。 4)横山 政輝  私は今回の研修を大きなチャンスだと思い応募しました。目的としては、主に以下のものです。 (1)イギリスの視覚障害者教育について学ぶ  私は、日本の通常学校、盲学校両方で授業を受けてきたのでイギリスでの視覚障害者への教育がどうなっているのか大変興味があります。先進国であるイギリスでの支援の体制なども知ることができればと思っていました。 (2)博物館等の施設での進んだバリアフリーシステムを学ぶ  私は昔から博物館が好きでよく訪れるのですが、日本の博物館では視覚障害者への配慮は十分とはいえず、多くの博物館では、館内は暗く、展示物は触ることができません。一方イギリスの博物館は障害への配慮が進んでいると聞いたので是非とも訪れて、その様子を見てきたいと思いました。 (3)イギリスの文化を体験する  イギリスは歴史が色濃く残っている美しい国というイメージがあります。また、食事が美味しくないというイメージもあります。こうしたイメージが本当のものかどうか実際に体験して確かめたいと思っていました。 6.研修内容 1)野外活動 -大自然とチームワーク- 青木 悠弥  キャッスルショウ野外教育センターでは、ウォールクライミングや、カヌー体験などをしました。  まずは、インストラクターの指導の下、安全ベルトを装着するところから活動は始まります。インストラクターのマットさんとロッドさんはとても陽気な方たちで、これからの活動がとても楽しくなることを予感しました。  さて準備ができたら早速ウォールクライミング場に向かいました。そこには難易度の異なる三つのコースが並んだ10メートル以上の壁がそそり立っていました。このウォールクライミングでは実際に登るクライマーの他に、地上でロープを確保する人が2人必要です。クライマーが登った分だけのロープを地上にいる2人がたぐり寄せてクライマーの安全を確保します。登っている時は地上からの声援や、どのホールドを掴むと良いかの指示がありましたし、地上にいるときもクライマーの安全を確保する必要がありました。今まで私は、クライミングは個人競技であると思っていましたが、実は1人ではできない競技なのだと感じました。  アドバイザーの青松先生をはじめ、引率スタッフも全員が3つのコースを登りました。  その後は、地面からまっすぐ立つ10m程度の一本の柱を登って、頂上のプラットホームに立つというスリル満点の活動を行いました。プラットホームには3人までは乗ることができて、次に登って来た人を引き上げたり、お互い手をつないで立ったりと、落ちないように支え合いました。協力し合いながらオールダムの自然を見下ろしていました。  その後、決められた範囲を川に見立ててターザンロープで島に飛び移るということをしました。この島には一度に10人ほどが乗ることができたのですが、それは超満員電車さながらに密集して島に乗ることになります。お互い島から落ちないように肩を組み合って、新たに渡ってくる人を受け止めました。全員楽しく一体感を感じながら午前中はあっという間に過ぎていきました。  午後はカヌー体験でした。再び万全の準備をして湖に向かいました。その湖の水は近郊の人々の飲み水にもなっているそうです。羊がちらほら見える緑の岸に囲まれた、きれいな湖でした。2人乗りカヌーを木の棒とロープで繋ぎ、4人乗りのカヌーにして乗り込みました。翌日に筋肉痛になったほど漕ぎましたが、インストラクターの方の話を聞いたり、雄大な自然を感じたりしていれば、疲れは特に気になりませんでした。私はカヌーの舳先の方に乗って漕ぎましたが、前の2人で息を合わせて漕ぐのはなかなか難しいものでした。  途中、3ペアのカヌー同士でボールを投げ込み合うチーム戦を行い、チームワークを高め合いました。こうして、野外活動は幕を閉じました。  この活動で研修生同士に限らず、アドバイザーや引率スタッフとも協力し絆を深められたと私は感じます。そしてその絆は、この後の異文化交流パーティへと続いて行くのでした。     2)異文化交流パーティ 菅田 利佳  野外活動の後は、私たち4人が企画した交流パーティを行いました。テーマは「はし」で、「箸」「橋」「端」という三つの同音異義語を紹介しようというものです。  この日は、現地の視覚障害のある学生やその家族など、20名ほどが集まってくださいました。私たちはこのパーティを明るく快活な雰囲気で進めたいと考え、法被を着て参加しましたが、初めは少し緊張を感じていたのも事実です。しかし、現地の方々は私たちが紹介したものにとても興味を持ってくださいました。  「箸」を使って、食べ物の形をした消しゴムをつかんだ後、白玉を食べていただきましたが、あんこがとても好評だったのには少し驚きを覚えたほどです。  その後は、2つのゲームを行いました。1つは、日本語での『ロンドン「橋」』、もう1つは、輪になってフラフープを「端」から「端」までくぐらせる『フラフープゲーム』です。一緒にゲームをする中で、少しずつ緊張もほぐれ、交流を深められたと感じています。  最後にプレゼントした日本の駄菓子では、「笛ラムネ」が特に人気で、吹いて楽しんでくれている様子を見るととても嬉しかったです。  今回のパーティは、日本のことを紹介するだけでなく、共に行う活動の中で現地の人々と私たちをつなぐ懸け橋のようなものになればという願いがこめられていました。最初は心配や緊張を感じていましたが、そんな気持ちはいつの間にか嘘のように吹き飛んでいました。参加者の方々はみな、私たちの英語をじっくり聞き、日本のことについて質問をしてくれました。またイギリスのこともたくさん話してくれました。今振り返ってみると、本当に素晴らしい交流パーティだったと思います。 3)イギリスのインクルーシブ教育について 青木 悠弥  初めに、この項目では「盲学校」という言葉に対して「通常学校」という言葉を使用します。また、文章内で説明されていない語句に関しては、文末で解説しております。  私たちはこの研修を通して2回の講義を受けて、イギリスのインクルーシブ教育について学びました。研修2日目にケイ・レンチ先生から「オールダムとインクルーシブ教育」と題した講義を受けたことがその内の1回です。そこで私たちは、イギリスのインクルーシブ教育の歴史や、オールダムの発展した支援制度について学びました。ここには12歳のブラッドリー君と、ティーチングアシスタント※のマイケルさんがいて、ブラッドリー君の学校生活を知ることもできました。もう1回の講義は、研修7日目にRNIB本部を訪れた際にロス・デイビス先生から受けました。主に、ロンドンにおけるインクルーシブ教育を中心に、より知識を深めていく講義となりました。以上2回の講義の内容をまとめると次のようになります。  イギリスでインクルーシブ教育が注目され始めたのは、1981年のころでした。インクルーシブ教育とは、通常学校の中で様々なニーズを持つ人が、様々な配慮を受けながら、共に学んでいくような教育を指します。1981年以前は、主に弱視の生徒のみが通常学校に通っていました。その後、全盲の生徒を通常学校に通わせたいという要望が出され、教育者の育成などが始まり、国を挙げての教育改革が行われたのでした。こうして現在では、各地域の教育局ごとに支援を行っています。  オールダムでは、教育局に特別なチームを置き支援体制を構築しているため、きちんと教材を用意できるということでした。しかし地方によっては、点字で書かれた教材を用意できず、コンピューターの音声やアシスタントの声ばかりに頼るため、授業内容が分かりにくくなるという問題もおきているようです。            少し前までは、ほとんどの視覚障害者が通常学校に通っていましたが学校ごとの支援の仕方にばらつきがあるため、残念ながら、現在盲学校を選ぶ生徒が増えているそうです。  RNIBの講義で分かったことですが、支援を必要とする生徒はその旨を役所に伝える必要があります。それが受理されると、政府から予算が出されるのです。このとき、支援を受けたくても、それが受理されない場合があります。そのため、政府と生徒の間にコーディネーターが入り、それを調整する必要があります。インクルーシブ教育は、制度と予算と人員のバランスが難しいそうです。しかし、これらのバランスを保ちながらも、しっかり実行されているイギリスのインクルーシブ教育はすごいのだと私は感じました。  最後に、オールダムの学校に通うブラットリー君の学校生活を例に上げたいと思います。彼は通常学校に通い、ティーチングアシスタントを付けてもらいながら勉強しています。ティーチングアシスタントは教材の作成や、視覚障害者が情報を得るために欠かせないインターネットの活用などのIT技術、歩行訓練などを教えています。イギリスにはナショナル・カリキュラムがあり、しっかりと教育課程が設定されています。授業はそれに沿って進められるのですが、歩行訓練などといった授業は通常学校に存在しません。つまりブラットリー君は、学校の授業と宿題とは別に、自立するための技術を磨く時間を別にこなしているのです。  現在日本では、視覚障害者が通常学校に通うことは困難です。私自身も授業の難しくなる中学校から盲学校に行くことを決めました。日本に本格的なインクルーシブ教育を整備するとなったら、視覚障害者の支援は難しいということが今回の講義で分かりました。視覚障害を伴う生徒は少ないため、指導のノウハウが蓄積されず、各学校に支援を任せきりにすることができないのです。イギリスでは各地方の教育局が担っている視覚障害者の支援を、日本では盲学校が担うと良いように思います。生徒が盲学校か通常学校かを自由に選び、生徒のニーズをかなえて、誰でも平等に勉強することができる、そのような教育が日本でできるように、私もできる限り働きかけをしたいと思いました。 ※ティーチングアシスタント:支援を必要とする生徒のために、授業のサポートをしたり、学校に働きかけたりするスタッフのこと。イギリスでは各学校が直接雇ったり、教育局から派遣されたりしている。 4)博物館等 横山 政輝 (1)国立炭鉱博物館 National coal mining museum for England  ヨークシャーにある炭鉱をテーマにした博物館で、実際に採掘が行われていた炭鉱跡がそのまま博物館となっています。私達は、研修2日目の午前中、つまり最初のプログラムとして訪れました。キャッスルショウからバスで約1時間、防寒のため上着を着て、ヘルメットとライトを装着し、いざ140メートルの地下の世界へ!  重々しいエレベーターで下っていくと、そこには果てしない暗闇が広がっていました。この暗さと寒さの中で大人から子供までが働いていたと思うと、人々の逞しさに驚かされます。ガイドの方の案内でトンネルを進んでいきます。所々に当時の採掘の様子が再現してあり、マネキンや機械などが置かれているので、触って人の動作や穴の狭さ、機械の大きさなどを感じることができます。トンネルでは、19世紀前半から20世紀にかけての採掘の様子を再現しており奥に進むにつれ時代が新しくなっていきます。初めの頃は、蝋燭の明かりを頼りに家族ごとに部屋を持ち、分担して採掘が行われていました。やがて、明かりはランプに代わり、人々は皆で大きなトンネルを掘るようになり、ダイナマイトも使われるようになりました。ダイナマイトの音を聞くことができるコーナーもありました。時代が進むと、機械が使われるようになり効率性も安全性も増していきました。機械やドリルは、実物を触ることができます。最近でも中国などでは使われていたそうです。時代を現代に戻り地上へと上がってくると地上の明るさと暖かさを感じることができました。  今回、イギリスの炭鉱とそれを支えた人々の暮らしをよく知ることが出来たと思います。こうした体験型の博物館は日本にあることはあるのですが、ここまで、実物を使ってわかりやすく展示している博物館は貴重なので、是非とも訪れるべき博物館だと思います。  また、後で知ったのですが、オールダムでの活動をコーディネイトしてくださったイアン・レンチさんやホストマザーのシルビアさん達のお祖父さんも炭鉱で働いていたそうです。オールダムやマーズデンでも所々、運河や工場跡など産業革命に関連する場所がありました。そのため、前半の研修では美しい自然だけでなく産業革命の名残も感じることができました。 (2)ヨークシャー彫刻公園 Yorkshire sculpture Park  炭鉱博物館を訪れた日の午後には彫刻公園に行きました。広い公園のあちこちに巨大な彫刻がたたずんでいました。中には日本人アーティストの作品もありました。残念ながら2年前より触ってもよい作品が減ってしまったそうですが、巨大なウサギ人間やねじ曲がった木のアートなど不思議な作品に触れることができました。  また、公園には緑がたくさんあり、天気も良く散歩にはもってこいの場所でした。日本では見られない種類の木も生えており、面白かったです。私達と一緒に、活動したブラッドリー君も大木が気に入ったようでした。  歩いた後は、ケイ先生の提案でカフェに行きお茶をしました。メンバー達と語らいながらお茶を飲み、ゆったりしたオールダムの午後を満喫しました。 (3)ヴィクトリア&アルバートミュージアム Victoria and Albert Museum  ロンドンについてすぐにヴィクトリア&アルバートミュージアムを訪れました。ロンドンで有名な博物館の一つで、その名のとおりヴィクトリア朝時代に作られました。ここには、ヨーロッパを中心に様々な時代の芸術作品が展示されており、今回はタッチツアーで博物館を巡りました。ガイドの方は、以前盲学校で教師をされていたらしく、わかりやすく解説してくださいました。パイプや宮殿のタイルといった昔のものから、ガラスの階段や鉄のアートなど現代の芸術家による作品まで様々な展示物を解説していただきました。  今回は特別に普段は触ることのできない鉄の壁の作品をゴム手袋をつけて触らせていただきました。触ることで作品の細部までがわかり、各時代の匠たちの腕の高さがよく伝わってきました。もちろん触れない作品もたくさんありましたが、日本の博物館に比べ触れる展示が多かったのはうれしかったです。 (4)大英博物館 British Museum  私達は世界一有名な博物館、大英博物館を訪れました。今回は、去年から始まったというタッチツアーにて、博物館内のエジプトギャラリーを見学しました。  ギャラリーでは古代エジプト文明を代表する巨大な神々の像やファラオの像を見学しました。私達のガイドさんは、アメンホテプ三世の時代を中心に、展示物と古代エジプトの歴史を解説してくださいました。ロゼッタストーンもレプリカではありますが、触らせていただきました。  日本の大抵の博物館では、実物の像を触るどころか、レプリカですら近づけないことが少なくありません。そのため、今回、今まであまり気に留めていなかった像の細かい装飾などをじっくり観察することができました。  大英博物館ではタッチツアーが始まったばかりで、まだエジプトギャラリーでしか行っていないそうですが、他の展示コーナーにも早く広がると良いなと思いました。 5)芸術 菅田 利佳 (1)音楽教育  1)音楽教育  RNIBにて、音楽教師のサリー・ジンマーマン先生と、英国在住の視覚障害のあるヴィオリスト、菊池崇さんから貴重なお話を伺うことができました。イギリスの音楽教育に興味を持つ私が、最も楽しみにしていた活動の1つです。  RNIBは、音楽家の支援も行っており、その中で点字楽譜を使用している学生は、120名ほどいるそうです。支援の内容には、楽譜の点訳、コンサートの企画、自己表現力を高めるため、プレゼンテーションをする機会の提供などがあります。また、RNIBが所有している書籍や楽譜のデータは、インターネット上でダウンロードし、点字や拡大文字で読めるシステムがあることも初めて知りました。最近では、点字楽譜を書くと活字の楽譜に変換できる技術なども使われているそうです。  そんなお話の中で、ジンマーマン先生が、「視覚障害者にとって、楽譜を手に入れたり、コンサートを企画する面では様々な困難もあるけれど、音楽を奏でることに障害はない」とおっしゃっていたのが印象的でした。  また、菊池さんは、「つねに人から見られていることを意識しておくことが大切」とおっしゃり、ご自身も美しい姿勢や動きを身に付けるために、バレエ教室に通われたそうです。お二人のお話を聞いて、私も様々なことに意識を向け、演奏に活かしていきたいと強く思いました。  そして最後には、ピアノ演奏をさせていただきました。世界三大ピアノの一つと言われるベヒシュタインに初めて触れ、リストの「軽やかさ」を弾いた時の音色の美しさは、今でも忘れられません。また、菊池さんと即興で、「早春譜」と「春の海」も演奏することができました。即興も初めてでしたが、菊池さんが私に合わせてくださったおかげで、アンサンブルの楽しみを心から味わえ、本当に素晴らしい経験となりました。 (2)ロイヤルアルバートホール  このホールは、ヴィクトリア女王の夫であったアルバート公に捧げられたもので、1871年に開場しました。年間を通して様々なコンサートやスポーツの試合、サーカスなどが行われていますが、特に毎年夏に開催されるクラシックの音楽祭、「BBCプロムス」で有名です。  この日は、音楽祭の開催中であったため、見学ツアーの後、コンサートを鑑賞することができました。ツアーでは、王室専用のボックス席や控え室などを見学し、ホールの美しい響きを作り出しているマッシュルームという装置についても教えていただき、とても興味深かったです。  そんな素晴らしいホールで聴いたエルガーの交響曲とチェロの深い音色は今でも強く心に焼き付いています。また、ボックス席で飲み物を片手に耳を傾ける観客がいる一方、立ち見席で寝そべるなど自由に音楽を聴いている人々もおり、様々な楽しみ方があってとても面白いと思いました。 (3)セントポール大聖堂  研修も終わりに近づいた日の午後、私たちが向かったのは、ロンドンの象徴とも言われるセントポール大聖堂です。クリストファー・レンによるバロック建築の傑作で、現在の建物は1710年頃に再建されたものだそうです。  今回のタッチツアーでは、壁や柱の装飾などにじっくり触れることができました。また、実際に歩きながら歩数を数えてみるという体験から、この聖堂がいかに大きいかを知ることができたと思います。パイプオルガンの演奏も素晴らしく、間近で地面や壁から伝わってくる振動やオルガンからの風を感じました。  そして、257段の階段を上ったところには「ささやきの回廊」と呼ばれる壁がありました。これは壁に向かって囁くとその声が向こう側にいる人まで伝わるという不思議なものです。残念ながら、私たちの声は届いたのかどうかよくわかりませんでしたが、このタッチツアーは歴史ある芸術を肌で感じられた素晴らしい経験となりました。 6)在英国日本大使館訪問 今岡 称  研修の後半には、在英国日本国大使館を訪問しました。歴史を感じさせる外観が素晴らしく、館内には赤絨毯が敷いてあり重厚な雰囲気にとても緊張しました。大使館では一等書記官の和田幸典さんと板倉寛さんから、イギリスの医療や教育についてのお話を伺いました。 (1)医療について  イギリスの医療制度はNHS(ナショナルヘルスサービス)と呼ばれ、国営で、一部の薬以外は個人負担がなく無料となっています。かかる医療費は税金8割、保険料2割でまかなわれていますが、日本と同様年々医療費は膨らみ、国民の負担になっています。しかしイギリス国民は苦しくても無料医療を継続することが大切だと考え継続を望んでいます。イギリスは国の予算の半分以上を医療・年金・介護などの予算が占め、「ゆりかごから墓場まで」と言われるほどの福祉国家です。  イギリスで病院にかかるときは日本のようにはいきません。まず居住区ごとにきめられたGP(General Practitioner・高度な専門性を持ち総合診断ができる医師)にかからなければなりません。重病時はこのGPの紹介で専門病院にかかることができます。  日本では体調が悪いときはいつでも好きな病院を選んで受診することができますが、イギリスではまずGPの予約をとらなければならず、この予約がなかなかとれないのだそうです。風邪をひいて苦しくても数日後でなければ診てもらえないことも少なくないと聞いて驚きました。  日本では病院にかかるために学校や仕事を休むことは気が引けることですが、イギリスでは、なかなか予約の取れない受診にわざわざ行くことは体調が非常に厳しい状況だということになるので、周囲の理解は得られやすいのだそうです。また労働の形態の多くが時間勤務なので、通院によって収入が大きく減ってしまうこともなく、付き添い者(ケアラー)である保護者に対する理解や支援も進んでいます。  受診が自由にできる日本は医療費が非効率になります。イギリスの無料医療は素晴らしいですが受診は自由にできません。それぞれの制度は各国の歴史や文化背景とともに発達してきたので、そのまま真似るだけではうまくいかないし、一面だけをみて善し悪しを判断することはできないというお話が印象的でした。   (2)教育について  イギリスの初等中等学校はそれぞれが独立していて一定の裁量を持っており、学校ごとに教員を募集採用します。公立学校でも教師は公務員ではありません。教員の6分の1が外国人であることも驚きです。  オフステッド(Office For Standards In Education)と呼ばれる学校監査機関があり、評価を公表します。学校情報(在籍する障害生徒の割合、生活保護者の割合、学力調査結果、第一言語が英語であるか、人種などあらゆること)がホームページに開示されていることも特徴です。開示された情報で保護者は子どもに合う、希望する学校を決めることができますが、一方で入学希望者数の偏りが生じてしまう問題があります。  近年のOECD(経済協力開発機構)の学力調査ではイギリスの結果は平均点以下になっています。これは近年移民が増えたことも原因ではないかと言われています。第一言語が英語でなくても学校の授業は英語で行われるため、理解度に影響がでたのではないかと考えられています。一方大学には世界ランキング上位の学校がたくさんあります。イギリス国内にはおよそ130~140の大学があり、そのトップ30には世界各国から最高レベルの学生が大勢集まっています。研究レベルは高いのですが、大学の財政が一部寄付金でまかなわれているため将来営利を目指せるかどうかが研究を進める判断になっており、利益に直結しない基礎研究を行うことは日本よりも難しいそうです。  お二人は最後に、「日本にいるときには普通に感じていたことが、海外に立って視点を変えると特殊に感じることがある」と話されました。視点を変えると見えるものはたくさんあります。和田さんと板倉さんには、イギリスと日本の比較と、様々な視点をもって物事を考えることが必要であると教えていただきました。 7)視覚障害者リーダーを訪ねて 横山 政輝 (1)ノエル・サッチャーさん  私達は日本大使館にてノエル・サッチャーさんとの懇談をさせていただきました。ノエルさんはパラリンピックの金メダリストで、陸上競技において6回出場し5個のメダルを獲得されたそうです。  駅伝を始め、日本の文化にも大変興味がおありで、なんと日本語検定1級をお持ちだそうです。そのため、お話も全て日本語でしてくださいました。  ノエルさんは、弱視の方で、最初は通常学校に通い、12歳から当時生徒数がとても多かった盲学校に通うようになったそうです。ノエルさんの通った盲学校にはたくましい生徒が多く、特にスポーツでは地域の大会で通常学校を抜いて優勝するくらい強かったそうです。ノエルさんはもともと走る事には興味がありませんでしたが、ある時、学校の罰で走らされたのをきっかけに、徐々に走る機会が増え、遂にはパラリンピック金メダリストとなられたのだそうです。また自由な盲学校での生活やパラリンピックを通して、障害は関係ない、障害ではなく挑戦する機会を与えられているということなんだと実感されたそうです。  私達、研修生の中には、学校で陸上部に所属している者もいたのでノエルさんのお話は大変参考になりました。イギリスは日本に比べ、各地に伴走者の団体があるなど、視覚障害者がマラソンなどに挑戦する環境が充実しているようです。  ノエルさんは日本のマラソン大会参加の経験もあり、美しい景色や温かい人々を大変気に入っているとのことでした。今回、ノエルさんのお話を聞くことで、将来へのヒントを得るだけでなく、日本の良さを再発見することができたと思います。   (2)カフサ・グラムさん  私達はRNIBで、現地の若い視覚障害者の代表としてカフサ・グラムさんにおいでいただいて、お話を伺いました。カフサさんは、パキスタン出身の方で現在はRNIBで働いていらっしゃいます。  今回はイギリスの若い視覚障害者の生活についてのお話をしていただきました。 お話の中で印象的だったのは、最近の若い視覚障害者の方々は積極的にSNSを使っているということでした。ブログなどでファッションや、スポーツなどの情報を交換しているそうです。また、SNSは社会に情報を発信し、人々に視覚障害について理解してもらうことにも繋がると話してくださいました。   カフサさんの趣味は旅行で、視覚障害があっても楽しむための工夫をいろいろと考えているそうです。また、カフサさんは若い視覚障害者を勇気づける活動も行っており、自分が幸せになること、自分のやりたいことをするべきであり、あきらめてはいけないとアドバイスをくれました。  視覚に障害のある当事者の方々からイギリスの実f情をうかがうことは、当事者だからこそ共感できることも多く、貴重な体験となりました。 8)ホームステイ (1)青木悠弥・横山政輝  私たちはニール & シルビア・ハンソン夫妻のご家庭にホームステイさせていただきました。このホームステイを通して、私たちはオールダムが大好きになり、ここに住んでもいいなと思うほどに充実した時間を過ごしました。 ハンソン家に着いてみると、私たちはその広さに圧倒されました。3階建ての大きな邸宅は居心地の良い雰囲気を醸し出していましたし、同様に広いガーデンも気持ちの良い場所でした。ガーデンで一息ついているときに、私たちは、お二方からステキなプレゼントをいただきました。手作りの本立てであったり、アンモナイトの化石であったりと、あらかじめ伝えられていた私たちのプロフィールに合わせたプレゼントでした。前々からお二方が準備してくださっていたプレゼントに真心を感じました。出かける前には、シルビアさん手作りのケーキなどもいただき、私たち初めてのホームステイは良いスタートを切ったのでした。  シルビアさん特製のケーキをいただいた後、ニールさんの計画で観光に出かけました。最初は近くの駅から電車に乗ってハダースフィールドへ。当日ハダースフィールドではフードフェスティバルが行われていたのでそこでお昼をいただきました。モンゴル、マレーシア、スペインと様々な外国料理の屋台が立ち並び、駅前は大賑わいでした。私達は、今まで食べたことのなかったカリブ料理のヤギのカレーを食べてみました。中にヤギの骨が入っていてびっくりしましたが、飲み物付きで7ポンドとお得なランチでした。  午後からは、パブの街マースデンへ向かいました。マースデンでは、運河沿いをトレッキングしました。途中船型の住居や、羊の通り道など面白いものがたくさんありました。ニューキャッスルという所までやってくると、運河の先にトンネルが見えてきました。昔は船で、ここを通って荷物を運んでいたそうです。今回はシルビアさんの提案でトンネルの中に入っていくツアーに参加しました。ボートに乗って狭いトンネルの中に入っていくと、涼しさと水の音を感じる事ができました。ガイドさん曰く昔はボートでここを進むとき、あおむけになり足で壁を蹴って進んでいたそうです。  貴重なツアーの後は、マースデンに戻って街の中を散策しました。教会やスーパーなどに行きました。また、シルビアさんのお知り合いの方のアートギャラリーにもお邪魔しました。丁度ギャラリーでは開店2周年の記念パーティが行われていて私達もケーキをご馳走になりました。  ギャラリー訪問後、ハンソン家に戻りました。その後休憩時間を経て、楽しいディナーが始まりました。メニューは、ローストビーフ、ベイクドポテト、温野菜や一口大のヨークシャープディングなどに特製ソースを掛けた物と、ルバーブプディングとアイスクリームでした。私たちは大いに食べ、大いに話しました。スタッフの石川先生に通訳していただくところは多々ありましたが、自分たち自身の英語で話すことができました。  その後私たちはお二方に、緑茶のティーパックやお菓子などをプレゼントしました。それはとても喜んでいただくことができました。その後片づけをして、興奮冷めやらないまま就寝しました。  翌朝は、ベーコン、豆、トマトやトーストといった典型的なイギリスの朝ご飯をいただきました。その後、写真撮影や連絡先の交換をして、お別れとなりました。お二方は「また来てね。」と言ってくださいましたし、私たちも「是非また、二人できます。」と約束しました。  私たちはこのホームステイで、予想していた以上のものを得ました。これを糧に、これからの人生に生かしたいと思いますし、ハンソン夫妻とのご縁を大切にしたいと思います。 (2)今岡弥・菅田利佳  私たちがお世話になったアナ・キッドさんは、普段、ロンドンで銀行員をされています。旬や季節を生活に取り入れることが上手く環境を大切に考え生活しておられます。ステイ先はアナさんの友人宅で、友人が夏休みで留守にされるため、その家をまるごと(ペットの犬1匹と猫2匹も!)お借りしてのホームステイとなりました。家を貸し借りすることが外国映画のシーンのようで大変驚きました。  アナさんはまず私たちに、階段、洗面所、電気のスイッチなど家の様子を説明してくださいました。「こちらが」「あちらが」と言うのではなく、自分のことが一人でスムーズにできるように、ひとつひとつその場所にいって触りながら教えてくれたので、とてもわかりやすかったです。  アナさん手作りの軽い昼食の後、近所の運河周辺を散歩しました。  彼女は、街の歴史や運河についてたくさんお話してくださり、実際に運河の水門を開け閉めし、ボートが行き交う様子を見学することもできました。途中に立ち寄ったパン屋や小さな商店は、昔からある建物を改築したものだそうで、歴史ある建物を大切にするイギリスらしさを感じました。  帰宅後は、アフタヌーンティーの定番、スコーンをみんなで作りました。アナさんは、作り方を言葉だけでなく、手を添えて丁寧に教えてくれ、クリームがどのくらい泡だったかを、泡立て器についたクリームの柔らかさで知る方法も体験しました。また、ラズベリーの熟れ具合を触って確かめる方法も面白かったです。こうして出来上がったスコーンの美味しさは今でも忘れられません。  そして夕食には、クリスマスディナー、デザートにはクリスマスプディングをいただきました。どれも、心のこもった手料理でイギリスらしさを感じられるものでした。  その後、私たちは、イギリスでの障害の捉え方について、多くの質問をしたのですが、彼女は全てに言葉を尽くして答えてくださいました。その中の「自ら人生を選び取っていけるのが自立である」という言葉がとても印象に残っています。  このホームステイでは、様々な面でアナさんにご負担をおかけすることもあったと思います。しかし、彼女は、そんなそぶりは一切見せず、いつも明るい笑顔で接してくれました。私たちの英語をじっくり聞いてくれ、日本とイギリスの文化の違いを共有できたことも嬉しかったです。また、彼女と一緒にいたことで、「人と誠実に向きあうこと」の大切さを学べたと感じています。私たち二人にとって、忘れられない素晴らしい経験になりました。 7.研修のまとめ(研修生) 1)青木 悠弥  今回の研修は、1ヶ月分の経験を10日間に凝縮したような充実した研修でした。研修目的として私が掲げた2つの項目は、達成できました。しかしそれ以上に、私の中でホームステイの思い出は印象に強く残っています。実は私は、英語への苦手意識があり、この研修がその克服に繋がれば良いと期待していました。拙い英語でしたが、ホストファミリーとじっくり話せたことは、私に「英語を上手に話せるようになりたい」という気持ちを起こさせました。これだけでも私は、この研修に来ることが出来て良かったと強く思います。  さらに、ほぼ初めてとも言える海外に、このメンバーで、このプログラムで行くことができたことは大変すばらしいことでした。研修生は個性豊かで、様々な話をして笑って、共に研修を楽しめたと感じています。お互いに意見を出した末に作り上げた異文化交流パーティの成功は、私の中で1つの自信になっています。引率スタッフの方々ともたくさんのお話をすることができ、日本のインクルーシブ教育に関する情報など大切なことをたくさん知ることができました。そして、この研修でしか体験できない講義やタッチツアーが準備されていたことは、とてもありがたいことだと思います。  この研修は10日間という短い期間でした。そのため、語学留学などのように、それに特化した能力を上達させることはできませんでした。しかし、たくさんのきっかけ、たくさんのご縁をいただき、私の人生にとって大きな財産になったと考えています。もし、海外に興味のある後輩がいれば、このプログラムを勧めたいと思います。ぜひ、この研修プログラムが続いていってほしいと願います。  このイギリスでの経験を糧に、これからも多くのことを吸収していきたいと思います。そして、日本社会、特に教育をより良くすることに貢献したいです。  最後に、この研修を支えてくださった本当にたくさんの方々に、深くお礼申し上げます。誠にありがとうございました。        2)今岡 称  10日間の研修は、毎日が発見や出会いの連続でした。異文化交流、クライミングやカヌー、芸術鑑賞、ホームステイ、大使館訪問など、どれだけ多くの方々が私たちの研修に関わってくださったのでしょうか。そして、支援者の視点、第三者の視点でのお話も、芸術・スポーツ・福祉の異なる分野で活躍されている障害当事者の方々のお話も、どれも興味深く初めて知ることばかりでした。  私はすべての人にとって住みやすい社会は、バリアフリーが進んで制度が整った社会だと思っていました。そこで研修の目的に、イギリスの進んだ福祉制度を学ぶことをあげ、学んだ制度を日本に応用できればよい社会が作れると考えていました。  研修前、福祉先進国イギリスに対しては、バリアフリーが進んでいて、誰もが一人で自由に行動できるイメージを持っていました。ところが街並みを作っている古くて歴史ある建物にはエレベーターがなく階段ばかりで、道は石畳で車いすやベビーカーに不向きな印象でした。しかし、生活しにくさは感じないし、私たちの外出も特別難しさはありませんでした。研修でお話を伺い、様々なプログラムの体験を通して、それがイギリス人のもつ助け合いやチャリティ精神によるものだと気づいたとき、自分の考え方は間違っていたのかもしれないと思いました。物理的に設備がしっかり整っていなくても、それを助け合いの精神で補えば問題ないのです。政府に難しいなら、RNIBのように民間団体で作ることもできる。多面的に考えることで別の解決方法を見つけられる。大切なのは、心がバリアフリーであることと、助け合うことを楽しむことでした。  この研修への応募、面接、二度の事前研修、壮行会、イギリスでの10日間、私は「障害を持っている自分」について何度も繰り返し考えました。自分はどんな人間なのか、何を希望しているのか、不安に思っていることは何か、何ができるのか、将来の希望、どうやって生きていきたいのか、もしも障害がなかったら、など。今回の研修で私が得た最も大きなものは、障害者は弱者ではないと感じられたことです。これからの生き方次第で私たちも誰かを支えられる存在になることができる。そのようなことに気づかせてくれた本当に素晴らしい研修でした。最後に、この研修を支援してくださったすべての方々に感謝申し上げます。そして私はいつか、この研修を支援できる人間になることを約束します。 3)菅田 利佳  この研修で私は、数え切れないほどの素晴らしい経験をし、「視覚障害者への音楽教育について知る」、「英語力を試す」という目的を果たすことができました。 どの活動も印象的でしたが、博物館のタッチツアーで多くの芸術作品に直接触れられたこと、オールダムの大自然の中で行ったウォールクライミングやカヌーは、現地に行かなければできない貴重なものだったと思います。  また、イギリスの視覚障害者への音楽教育やインクルーシブ教育について話を聞けた事は、私にとって大きな収穫でした。それまでの私には、イギリスの教育は発展していて障害者への支援も行き届いているというイメージがありました。しかし、一口にイギリスと言っても、一般校に通う視覚障害者への支援体制、点字楽譜の普及状況など様々な面で地域による格差もあるそうです。この点では、日本と似ていると感じました。  それぞれ異なる環境で学び、現在国際的に活躍されている視覚障害者の方々の言葉は、私に目標に向かう力を与えてくれました。  その他に、異文化交流パーティやホームステイを通して、たくさんの人々と関われたことも大切な思い出です。私の英語力には、コミュニケーションを取る上でまだまだ力不足な面もありましたが、現地の方々は皆、一生懸命理解しようとしてくださり、会話を楽しむ中で、友人もできました。  振り返ってみると、毎日がとても充実していてあっという間の十日間だったように思います。研修生同士の絆も深まり、最後に別れるのが少し寂しいほどになっていました。これからは学んだことを大切にしながら、語学力やピアノの演奏技術を磨き、音楽留学を目指して頑張りたいと思います。そして将来は、人々に感動や希望を届けられるようなピアニストになりたいです。  終わりに、ダスキン愛の輪基金の皆様や引率スタッフの方々をはじめ、私たち研修生を応援し、支えてくださった全ての皆様に、心から感謝の気持ちを伝えたいと思います。本当にありがとうございました。 4)横山 政輝  今回の研修では、10日間の貴重な体験を通し、様々な事を学びました。私は主に3つの目的をもってこの研修に臨みました。  1つ目はイギリスの視覚障害者教育について学ぶということでした。教育の進んでいるイギリスでは、通常の学校でも視覚障害者が普通に学習できるようになっているのかと思っていたのですが、教材の不足や、地域ごとの支援体制の差など、まだまだ課題が多くあることがわかりました。個人的には日本の盲学校も施設・設備が整っており、専門性のある先生方の指導を受けられるため、インクルーシブ教育には無い良さがあると思います。  2つ目の目的であった博物館等でのバリアフリーを学ぶことについては、今回3つの博物館を見学することができましたが、そのどれもが日本より多くの展示物を直に触ることができました。特に炭鉱博物館は実際使われていた坑道に入り実物の機械を見学できるのでとても貴重な博物館だと思います。また、大英博物館やヴィクトリア&アルバートミュージアムでもタッチツアーがあり展示物に触れることができたのは良かったと思います。日本の博物館もタッチツアーを積極的に行ってほしいものです。   そして、イギリスの文化を体験するという目的では、いろいろな料理を食べ、さらにはマースデンの町中にあった中世時代の拷問に使われた道具にまで足をはめたので十分体感できたと思います。  今回、イギリスの視覚障害者の方々にお会いして、情報発信の大切さ、そして何よりもあきらめない事の大切さを実感しました。また、お話を聞いたり、実際に街を歩いたりすると、日本との様々な違いが見え、日本もイギリスもお互い学び合うべきことがたくさんあると感じました。今回のような研修でなければこうした事を学ぶのは難しいと思います。この研修は自分にとって大変貴重なものとなりました。  最後に、今回の研修をサポートしてくださった先生方、ダスキン愛の輪基金の皆様、そして共に研修に参加した仲間に感謝したいと思います。皆様本当にありがとうございました。これからもこの研修プログラムが続いて行くことを願っています。 8.研修のまとめ(引率スタッフ) 1)石川 英司  この度のジュニアリーダー育成グループ研修には、スタッフの一人として参加させて頂きました。研修の前半ではオールダムにて野外活動や現地の人々と交流会、後半はロンドンのRNIB本部や日本大使館を訪れました。今回の10日間の研修の報告として以下にまとめたいと思います。  オールダムにあるキャッスルショウセンターは、小高い丘に囲まれた自然の豊富な研修センターです。ここでの生活は炊事洗濯全て自らしなくてはなりませんが、まず印象的だったのは研修生たちの意欲的な態度でした。食事の準備や片付けなどは皆率先して行いました。これにはレンチ夫妻も「私達のする事がないくらい!」と感嘆しておられました。また現地の人々との交流会準備では、研修生たちはグループとしてよくまとまり、台本の読み合わせから余興の準備までお互いによく話し合いながら進めており、チームワークの良さを伺わせました。ホームステイ先での温かい出迎えとホスピタリティにも感激し、決して長い滞在ではありませんでしたがオールダムを発つ頃にはもう名残惜しい様子でした。  ロンドンでは、RNIBでの講義や日本大使館でパラリンピック金メダリストとの懇談会に参加しました。研修生たちは、各自が事前に定めたテーマをもとに、積極的に質問や発言をしていました。音楽やスポーツの第一線で活躍する視覚障害者の先輩たちを目の当たりにして、研修生たちは各自が目指すべきロールモデルをはっきりと認識している様子も見て取ることができました。  全体として今回の研修で印象的だったのは、研修生たちの学ぼうとする姿勢と彼らの研修を通じての変化です。事前研修ではやや戸惑いがみられた英語での発言も現地へ入ると積極的になり、通訳がいる場面でも出来るだけ英語で対話者本人へ語り掛ける努力などが見受けられ、研修生たちの成長を感じられました。最後に、今回このような機会を頂き、大変感謝しております。 2)佐藤紀子  第34期の研修に続き、今回の研修にも引率スタッフとして参加させていただきました。この研修に同行することは、私にとっての大きな喜び、そして宝物となっています。この先、様々な場で活躍していくだろう前途有望な青年達の変化の様子を間近で見ることができるからです。  今回の研修では5つの研修テーマ・内容が掲げられました。振り返ってみると、全てのテーマが達成され、内容の濃い充実した時間になったと思います。特に「障害者の自立に向けた努力や取り組み」、「障害者リーダーの活動状況や想い」というテーマについては、国際的に活躍されている全盲のヴィオラ奏者菊地崇氏とパラリンピック陸上競技で6大会に連続出場し、5つの金メダルを獲得した弱視のノエル・サッチャー氏のお話は研修生にとって大変印象に残るものになったと思います。  音楽の世界は障害の有無はまったく関係のない実力の世界です。菊地さんは視覚からの情報がないために獲得が難しい姿勢や立ち居振る舞いなどについてロイヤルバレエ団の専門家から指導を受けたそうです。これはRNIBのサポートによるものです。また、日本の盲学校で習った点字が日常生活でも音楽の世界でも大変役に立っているとおっしゃっていました。  サッチャーさんは小学校は通常学校で過ごしました。中学生から盲学校に通い、見えにくさを補う方法を知り、目からうろこが落ちたそうです。そして、たまたま出会った走ることに対して喜びを見つけ、自信に変えていきます。  お二人のお話に共通していたのは、自身の障害を受容しそれを補う工夫を知ること、そして誰にも負けない得意なことを見つけることが大切だということだったように思います。  4名の研修生たちは、たくさんの時間を共にすることで、自分の得意なこと苦手なことを知ることができたのではないかと思います。リーダーシップが発揮できなければ、フォロワーシップを発揮すれば良いのです。研修生達はしっかりとコミュニケーションを取り、役割分担も明確に行っていました。  視覚に障害があることで出来ないこともあると思います。しかし、注目すべきは「出来ない」ことではなく、「出来る」ことです。今回の研修は彼らの大きな自信へと繋がったことと思います。これからも出来ること、得意なことをどんどん伸ばして行ってもらいたいと思います。  研修生の顔が日に日に変化し、自信に満ちていく様子が今回も見られて、とても楽しかったです。ありがとうございました!  3)鈴木彩  研修生はイギリスのオールダム、ロンドンに滞在し、イギリスの視覚障害者を取り巻く教育・雇用の現状について学び、様々な体験活動を通して、日本の仲間や現地の人々と交流を深めました。スタッフである自分にとっても、視覚特別支援学校の教員として大切なことを再確認させられた意義深い研修になりました。  オールダムでは、炭坑博物館見学・彫刻公園散策・ウォールクライミング・カヌー・交流パーティー・ホームステイなど、多彩なプログラムが展開されました。特に印象深かったのは交流パーティーです。オールダムに住む視覚障害者とその家族に対して、研修生が日本の文化として「Hashi(箸・端・橋)」について紹介する場面がありました。事前の綿密な打ち合わせと、当日の機転により、パーティーは大盛況で幕を閉じました。研修生の満足そうな顔つきが今でも忘れられません。  ロンドンではRNIBを中心として、視覚障害者の教育・雇用の最前線で活躍する様々な立場の人々に話を聞くことができました。彼らが話すことにはみな共通点がありました。それは、「物事の本質を突き詰めていくと、視覚障害の有無は関係なくなる」ということでした。世界的に活躍する全盲のヴィオラ奏者や、弱視のパラリンピック陸上の金メダリストが語る言葉に説得力があるのは勿論のことですが、それだけではありません。イギリスは決してバリアフリー施設で溢れているわけではないけれど、街中でも積極的に視覚障害者を手助けしてくれる人が多いそうです。それは、支えがあれば様々なことが“できる”ということが人々に広く認知されているからに他なりません。できるという点において、健常者と障害者とで違いはないのだと教えられた気がします。  今回の研修を通して、視覚障害を持つ生徒の支えとなり、彼らの可能性を少しでも開花させていくことが、視覚特別支援学校の教員としての務めであると改めて実感できました。お世話になったスタッフの皆さん、ダスキンの方々に感謝を申し上げます。ありがとうございました。 4)松崎 茜  今回、第36期ダスキン障害者リーダー育成海外研修に、スタッフとして初めて参加させて頂きました。研修生になるべく多くの実地経験をさせようと、ぎっしりのスケジュールでしたが、それに応えるように研修生が日々大きく成長してゆく姿に圧巻の10日間でした。最初は英会話がなかなかスムーズにいかなかったものの、研修半ばには積極的に英語で話が出来るようになり友人を作ったり、イギリスのバリアフリー設備に実際に触れることで、日本よりも進んでいるところなど、自ら新たな発見をしたり、現地で暮らす視覚障害者の方や彼らに関わる仕事に携わる方の話を直に聞き、ディスカッションを重ねたりと、研修生4名はそれぞれの感性で多角的な視野を養っていました。  グローバルな視点を持つことは、将来日本を牽引するリーダーになるために必須な能力であり、それを養うには実際に海外で様々な人と会い、体験をして、知識面・精神面において俯瞰的な考え方を持つことが大切だと思います。また、今回私にとって引率という責務は初めての経験でしたが、視覚に障害があるということは、子どもの場合には特に、図らずも行動の範囲が狭くなってしまいがちであることが想像できました。ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業は、自分の将来に対するビジョンのある若者に、成長の機会をふんだんに与えてくれる、大変有意義な事業であると思います。青木さん、今岡さん、菅田さん、横山さんの今後の活躍がとても楽しみです。 5)宮崎晶子  今回研修に参加させて頂いて一番印象に残っているのは、研修生たちの日々成長していく姿です。  本研修の大きな意義は、10日間という限られた期間の中で、自らの設定した目標を達成しようと、研修生たちが試行錯誤しながら各プログラムを体験していくことで、文化や言語の違いを乗り越え、様々な視点から物事が捉えられ、学びを得られることだと思います。英国で何が学びたいのか、文化交流でどうすれば日本の文化をうまく伝えられるのか等、事前準備の段階から研修生たちの志が高く、一つ一つの課題に真剣に取り組む姿に非常に感銘を受けました。また、様々な経験を通じて少しずつ自信がつき、日々成長していく姿が感じられたことが大変微笑ましかったです。  プログラムの最大の魅力としては、英国で異文化に触れることが出来るだけでなく、美術館のタッチツアーやBBC Promなどの音楽イベント体験や、実際に音楽やスポーツの世界の第一線で活躍する視覚障害者の方々の生の声を聞けることにあると思います。パラリンピックの金メダリスト、ノエル・サッチャーさんの「スポーツや運動をする上で、視覚障害者であることは全く関係ない…」という言葉が今でも強く印象に残っています。こうなりたいという明確な目標をもち常に切磋琢磨されている先輩方のプロ意識や言葉には重みがあり、研修生たちにとって大きな励みとなったのではないかと感じました。  またスタッフの皆さんも非常に素晴らしく少しでも研修をより良いものにしようという意気込みが感じられ、青松先生のリードのもと様々な方々に支えられた非常に素晴らしい研修だという印象も受けました。今後もこのような研修を通じて一人でも多くの若者が海外に飛び立てる機会があることを願いつつ、私自身もこのような研修に参加する機会を頂けたことに心から感謝いたします。 9.おわりに 青松利明  研修全体のアドバイザーとして、研修生・スタッフの全員が大きな病気や怪我も無く、無事に帰国できたことに安堵しております。また、ハードスケジュールにも関わらず、全員がほぼすべてのプログラムに参加することができ、充実した時間を過ごせたことをうれしく思います。  ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業の実行委員として、このようなジュニア研修を企画・実施することは、私の希望でもあり夢でした。それは私自身が高校時代に1年間アメリカに留学し、異文化の中で生活・学習をすることで、その後の生き方を左右するような大きな刺激を受けたからです。今回は2年ぶりとなる2度目の研修でした。短期間ではありましたが、各研修生のまとめを読むと、彼らが様々なことを学び、大きなインパクトを受けたことが伝わってきます。  高校生という若い世代の視覚障害者が直接異文化にふれ、同年代の視覚障害当事者と交流し、アクセシビリティについて知り、視覚障害のある人のための最新のサービスを学ぶという体験は、彼らの将来にとって意義のあることだと思います。これらの経験を通じて、かけがえのない財産を得ることができたに違いありません。 忙しい中、参加してくれたスタッフの協力がなければ、この研修は実現できませんでした。研修生の健康管理、記録のための写真や動画の撮影、レストランの検索や選定、地図の確認、細かな会計作業、宿泊施設や飛行機・鉄道の予約、各施設との連絡・調整など、さまざまな役割を分担しましたが、スタッフ間のチームワークの良さが研修の成功につながったものと思います。 この場をお借りして、公益財団法人ダスキン愛の輪基金、スタッフのみなさま、さまざまな形で研修生を応援し送り出してくださった保護者や各学校の先生方、イギリスでの受け入れをしてくださったレンチ先生をはじめ多くの方々、その他支援してくださったすべてのみなさまにお礼申し上げます。  最後に、研修生のまとめの中から、特に重要と思われる言葉を再度紹介したいと思います。 「この研修は10日間という短い期間でした。そのため、語学留学などのように、それに特化した能力を上達させることはできませんでした。しかし、たくさんのきっかけ、たくさんのご縁をいただき、私の人生にとって大きな財産になったと考えています。」 「今回3つの博物館を見学することができましたが、そのどれもが日本より多くの展示物を直に触ることができました。…日本の博物館もタッチツアーを積極的に行ってほしいものです。」 「それぞれ異なる環境で学び、現在国際的に活躍されている視覚障害者の方々の言葉は、私に目標に向かう力を与えてくれました。」 「今回の研修で私が得た最も大きなものは、障害者は弱者ではないと感じられたことです。これからの生き方次第で私たちも誰かを支えられる存在になることができる。そのようなことに気づかせてくれた本当に素晴らしい研修でした。」 2 1