あいのわ ダスキン愛の輪基金

2016年06月20日

第35期研修派遣生 スーみづきさん研修報告

私は、アメリカのニューヨーク州シラキュース大学内にあるBurton Blatt Instituteの訪問研究員として障害者雇用のリサーチをしています。このテーマに取り組むきっかけとなったのは自分自身の就職活動でした。私は小さい時から足に障害があり、日常生活では車イスを使用しています。一般教育を受け、健常者の友達と何でも一緒にすることが当たり前な環境で育ったことから、障害者採用という別枠で選考されることにすごく疑問を持ちました。多くの企業で障害者採用に用意されている職種は少なく、応募に必要とされるスキルの条件も少ないです。障害者を能力のある一人の人材として見ていないと感じました。また履歴書にある経歴には興味をもってもらえても、一度障害のことを伝えると面接拒否または返信が来ないということも珍しくありませんでした。 企業がもっと障害者の能力を見て採用をすすめれば、企業・障害者・社会の3者にとって良い変化が生まれます。私は日本の障害者雇用を変えたいと思い、障害学が始まった場所であるニューヨーク州シラキュースへ行くことに決めました。もともと大学時代にアメリカ中西部のウィスコンシン州に留学していたので、車イスでの生活のしやすさや、障害者がコミュニティの中で自立生活を送っていることは知っていました。今回の研究では更に広く深く、障害者雇用を軸に法律・歴史・教育制度などを調査しています。

これまで訪問したのはシアトル、サンフランシスコ、ボストンなど全7州12都市。取材させていただいたのは企業や障害者団体など約40カ所です。雇用に関して驚いたのは、障害の公開が任意であること(アメリカには日本の障害者手帳のようなものはありません)、雇用主側から障害について質問するのは違法であること、合理的配慮は障害者だけでなく、全従業員がリクエストできるようになっていることなどです。また全て会社が、採用で一番重要視することはその人が持っている「能力」だと言われていました。 企業訪問では障害のある従業員の方にも取材をしました。例えば、Facebook本社では全盲のエンジニアのMatt King氏にお会いしました。彼は視覚障害のFacebookユーザーに写真情報を音声で知らせするシステムを開発しています。Starbucks本社では、聾者でビジネスアナリストのAdam Novsam氏と一緒に社内会議に参加。当事者ならではの視点でアイデアを出し、他のメンバーに新しい気づきを与えていました。また大企業の多くで、従業員たちが本業とは別にダイバーシティ理解向上のグループに所属し、積極的に活動を行っているというのも企業文化に大きく影響を与えていると実感しました。 アメリカでの研究生活はあっという間に時間が過ぎ、残りあと3ヶ月です。すでにたくさんの発見や出会いがありましたが、日本に帰国する日まで引き続きアクティブに飛び回り、楽しみながら新しいネットワークをどんどん広げていきたいと思います!

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